2本のナイフ 最終話

〇工場   (中山、工場に出勤してくる。)

 

      (紺野と牧田、中山を待っている。)

 

 紺  野 「中山さん。」

 

 中  山 「はい。」

 

 紺  野 「出勤したばかりで申し訳ないのですが、県警本部までおいで頂けます

       か?」

 

 中  山 「本部ですか?」

 

 紺  野 「そうです。任意で来て頂けないとなると、逮捕状を執行しなければなり

       ませんが。」

 

 中  山 「…分かりました。」

 

 紺  野 「有難うございます。」

 

      (紺野、中山を車に乗せる。)

 

      (牧田の運転で、県警本部に向かう。)

 

〇県警本部 (捜査一課の取調室。紺野たち、中山を取調室に案内する。)

 

 中  山 「取調室…。どうやら貴方は、俺が犯人だと思っているようだ。」

 

 紺  野 「早速ですが、この写真を覚えてますか?」

 

      (紺野、10年前の写真を見せる。)

 

 中  山 「はい、覚えてますよ。貴方が最初に見せてくれた写真ですよね?これが

       何か?」

 

 紺  野 「この写真が、ガイシャの貸金庫に保管されていたとお話しした事も覚え

       てらっしゃると思いますが、やっとこの写真の意味が分かりました。」

 

 中  山 「何ですか?」

 

      (紺野、10年前の捜査記録を見せる。)

 

 紺  野 「10年前、千葉市で頻発した自動車窃盗の捜査記録です。貴方は窃盗団

       の一員として、県警に逮捕されていますね。」

 

      (紺野、中山の名前を指す。)

 

 紺  野 「ガイシャが持っていたこの写真は、その当時の写真です。どこから入手

       したか分かりませんが、ガイシャはこの件で貴方を脅したか強請ったか

       したんじゃありませんか?」

 

 中  山 「何故、そう思うんですか?」

 

 紺  野 「これは、ガイシャがPCに保存していたリストです。ここにある人たち

       聴き込んでみたら、ガイシャから脅されたり、強請られたり、高利で金

       を借りて返済に苦しんでいた人たちばかりでした。そして一番最後に、

       貴方の名前がある。つまり、貴方もガイシャの被害者だった。私はそう

       思うんですが、いかがですか?」

 

 中  山 「さあ、どうでしょう。」

 

 紺  野 「貴方は事件当日の午後11時頃、例の公園でガイシャと会った。そして

       彼に金を渡すと見せかけて刺殺したんです。」

 

 中  山 「刑事さん。前にも言いましたが、俺が公園にいたという証拠は?それを

       証明出来ますか?」

 

 紺  野 「貴方、マスターにこう言ったそうですね。『近くの公園で飲んでいたら

       飲みすぎた。』と。ひどく酔っぱらって店に行ったとそう証言されまし

       たね。貴方自身で公園にいたと仰っている。この証言を否定されます

       か?」

 

 中  山 「否定はしませんが、証明は出来ないでしょう。」

 

 紺  野 「それが、そうでもないんですね。こういうモノが出て来たんですよ。」

 

      (紺野、牧田から証拠品を受け取る。)

 

      (紺野、1枚の紙切れを見せる。)

 

 紺  野 「この紙、見覚えありますか?」

 

      (中山、黙り込む。)

 

 紺  野 「現場検証の時、鑑識は現場付近にあるモノを出来る限り押収します。ど

       こにどんな証拠があるか分かりませんから。これは水道の脇にあるごみ

       箱に棄てられていた紙切れです。これを調べて見たら…。」

 

       (紺野、2つの指紋を見せる。)

 

 紺  野  「1つは、ガイシャの指紋。もう1つは、貴方の指紋が検出出来まし

        た。しかも、これがまた面白い所なんですが…。」

 

       (紺野、内ポケットから財布を取り出し、中から1万円札を出す。)

 

 紺  野  「見て下さい。」

 

       (紺野が紙の上に1万円札を置くと、大きさがぴったりと一致する。)

 

 中  山  「……。」

 

 紺  野  「そう。この紙切れは、1万円札と同じ大きさに切られています。他の

        お札では合いません。千円札も、五千円札も合いません。」

 

       (紺野、千円札でも五千円札でも、重ねて見せる。)

 

 紺  野  「これが意味する所はお分かりですか?おそらく貴方は、これを見せ金

        に使った。1番上に1万円札を乗せてガイシャに渡した。金額は百万

        円。棄てられていた枚数が100枚丁度でしたから、その金額に見せ

        掛けようとした。しかし、それがガイシャにバレてしまった。だから

        殺したんじゃないですか?貴方は最初から払う気など無かったんです

        から。つまり、これは計画的殺人の証拠にもなる訳です。」

 

 中  山 「…果たして、そうでしょうか。」

 

 紺  野 「どうしてですか?」

 

 中  山 「これは、俺が公園にいたという証明であって、殺した証拠ではないです

       よね。物証は見つかったんですか?」

 

 紺  野 「いいえ、現場付近にもありませんでした。まだ発見出来ていません。」

 

 中  山 「そんな状況証拠だけで、よく逮捕状が請求出来ましたね。」

 

      (中山、椅子から立ち上がる。)

 

 中  山 「これは、任意ですよね?逮捕する証拠も無いなら、帰らせて貰いま

       す。」

 

      (中山、出て行こうとする。)

 

 紺  野 「それが、見つけたんです。」

 

 中  山 「え?」

 

 紺  野 「凶器を、見つけたんですよ。」

 

 中  山 「どこで。あるなら今、見せて下さい。」

 

 紺  野 「正確に言うと、凶器を隠してある場所を見つけたんです。明日、その場

       所を捜索します。」

 

 中  山 「それは、どこですか?」

 

 紺  野 「気になりますか?」

 

 中  山 「それは…。」

 

 紺  野 「今日の所は、お帰りになって結構です。明日の捜索で出て来たら、また

       お迎えに上がります。」

 

      (中山、取調室を出て行く。)

 

      (紺野と牧田、黙って見送る。)

 

〇船橋   (深夜の『ビート』に、中山が訪れる。)

 

      (中山、鍵をこじ開けようとするが、すでに開いている。)

 

      (中山、そのまま中に入り、厨房の棚の扉を開け、左から3番目に入って

       いる刃物を抜き取ると出て行こうとする。)

 

      (その時、店の電気が付き、紺野、牧田、大滝が入口に立っている。)

 

      (中山、黙って立ち止まる。)

 

 紺  野 「お待ちしてました。牧田君、頼むよ。」

 

      (牧田、厨房に入り、棚を確認する。)

 

 紺  野 「どうだい?」

 

 牧  田 「間違いありません。左から3番目です。」

 

 紺  野 「中山さん、残念です。これで貴方がホシだと証明出来ました。」

 

 中  山 「どうして。」

 

 紺  野 「実はすでに昨日の段階で、我々は凶器を見つけていたんです。」

 

      (大滝、袋に入れた凶器を見せる。)

 

 紺  野 「これです。分析の結果、凶器だと断定されました。」

 

 中  山 「それが、どうして凶器だと分かったんですか?」

 

 紺  野 「何故って?知りたいですか?」

 

 中  山 「はい。それに、俺の指紋でも残っていたんですか?」

 

 紺  野 「いいえ。貴方の指紋もガイシャの血痕も残ってませんでした。見かけ上

       はね。」

 

 中  山 「見かけ上?」

 

 紺  野 「おそらく貴方は、公園の水道で指紋も血痕も洗い流したんでしょう。見

       た限りでは何も残っていないように見えます。しかし詳しく調べて見る

       と、ちゃんと痕跡が残っていましたよ。」

 

 中  山 「どこに?」

 

 紺  野 「貴方は、ガイシャを刺した時にかなり深くまで刺していますね。そこで

       我々は、刃と取っ手の接合部にあるわずかな隙間を調べて見ました。も

       しかしたら、ここにも血液が入り込んでいるかもしれないと思いまして

       ね。そこで刃を取っ手から引き抜いて見たところ、予想通り、僅かな量

       でしたが付着していました。血液型を調べて見たらガイシャと一致、D

       NA型は現在分析中ですが、おそらくガイシャと一致するでしょう。」

 

 中  山 「…どうして、俺が犯人だと言えるんですか?」

 

 紺  野 「昨日マスターに、ガサ入れに立ち会って頂いた時、刃物がいつもより1

       本多い事が分かりました。その1本が凶器でしたが、入れてあった場所

       が左から3番目です。犯人が自ら隠したんだとしたら、入れた場所を知

       っているのは犯人以外にいません。ちなみに、そこに入れてある刃物は

       我々が用意したもので、店の刃物は1本もありません。」

 

      (中山、力が抜けたように、ソファーに座り込む。)

 

 中  山 「どうして、ここだって分かったんですか?」

 

 紺  野 「直接的なヒントをくれたのは、カミさんなんです。」

 

 中  山 「奥さんが…?」

 

 紺  野 「先日、カミさんが店で、知り合いから送って来たリンゴを剥こうとし

       て、厨房から果物ナイフを持って来ました。それで気が付いたんです。

       貴方のアリバイ証言の中で、刃物を隠しておいても違和感が無い、不自

       然ではない場所が1か所だけあると。それが、ここの厨房です。それに

       気付いた時、事件の全貌が見えて来ました。貴方があの公園を現場に選

       んだのも、わざわざ閉店間際に店に来たのも、全て貴方の計画だった事

       がね。それに、貴方には窃盗のマエがある。マスターが閉店準備をして

       いる隙に厨房に入って凶器を隠す事など造作も無い事だったでしょう。

       本当に、残念です…。」

 

 岡  本 「中山さん、何て事を…。」

 

 中  山 「マスター、ごめんなさい。巻き込むつもりは無かったんです…。」

 

 紺  野 「…行きましょうか。牧田君、頼むよ。」

 

 牧  田 「はい。」

 

      (中山、ゆっくりと立ち上がり、牧田と一緒に店を出て行こうとして立ち

       止まる。)

 

 中  山 「あ、刑事さん。」

 

 紺  野 「はい。」

 

 中  山 「奥さんに、特製ハンバーグ定食、すごく美味しかったですと伝えて下さ

       い。」 

 

 紺  野 「分かりました、伝えておきます。」

 

      (中山、牧田に連行されていく。)

 

      (紺野、中山たちを見送ると、店に入る。)

 

 紺  野 「マスター、レモンジュースを下さい。」

 

 岡  本 「はい。…ついでに、パスタはいかがですか?」

 

 紺  野 「今日の日替わりは、何ですか?」

 

 岡  本 「ほうれん草とベーコンのパスタです。」

 

 紺  野 「いいですね。頂きましょう…。」

 

      (―最終話― 了―)

 

      (全て、フィクションです。)

 

2本のナイフ 第10話

〇捜査一課 (吉川と大滝、紺野を待っている。)

 

      (紺野、店から戻って来る。)

 

 紺  野 「どうも、お待たせしました。」

 

 吉  川 「牧田君は?」

 

 紺  野 「中山氏を、自宅まで送って行きました。あの、新たな報告と言うの

       は?」

 

 大  滝 「例の10年前の事件です。記録を調べ直してみました。」

 

      (大滝、記録を見せる。)

 

 大  滝 「当時、千葉市内を中心に高級車ばかりを狙った窃盗事件が頻発したのを

       覚えていらっしゃいますか?」

 

 紺  野 「確か、1週間で20台ぐらい盗まれたっていう…。」

 

 大  滝 「そうです。その時にリーダー格と実行役の合わせて4人が検挙されてい

       ますが、そのうちの1人が中山徹です。懲役3年の実刑判決を受けてい

       ます。」

 

      (大滝、当時の中山の顔写真を見せる。)

 

 紺  野 「なるほど、間違いないですね。」

 

 大  滝 「ガイシャが貸金庫に保管していた写真の中に、盗まれた車の写真もあり

       ました。これらはUSBメモリーではなく、PCのファイルに纏められ

       ていました。」

 

      (紺野、その中に中山が車から身を乗り出している写真を見つける。)

 

 紺  野 「あ、この写真…。」

 

 大  滝 「そうです。ガイシャはこの写真だけをプリントアウトしたと思われま

       す。」

 

 紺  野 「しかし、これだけの写真をどこから入手したんでしょうか。これらは警

       察の内部資料です。もしかして警察関係者が関与しているのでは…。」

 

 吉  川 「そうだとすれば、これは監察官室の扱いになるな。」

 

 紺  野 「課長、四課からは何か…?」

 

 吉  川 「問い合わせているが、まだ回答は無い。しかしこれだけ見ると、ただの

       強請りとは思えないな。」

 

 紺  野 「そうですね…。警察関係者が背後にいるとしたら、逮捕歴が無いのも説

       明が付きますね。」

 

 吉  川 「まあ、そっちは他の部署に任せるとして、我々は殺しに集中しよう。」

       

 紺  野 「はい。…大滝班長、凶器は見つかりましたか?」

 

 大  滝 「いいえ。現場周辺の範囲を広げて探しましたが、出て来ません。」

 

 紺  野 「そうですか…。状況証拠は揃い始めていますが、やはり物証が無いと逮

       捕は難しいですね。」

 

 吉  川 「凶器か。一体どこにあるんだ…?」

 

 大  滝 「状況証拠と言えばもう1つ、面白いモノが見つかりました。」

 

 紺  野 「面白いモノ?」

 

 大  滝 「はい。現場の公園で回収した遺留品を調べていたら、こんなモノが出て

       来ました…。」

 

      (大滝、あるモノを2人に見せる。)

 

 紺  野 「これは…。」

 

〇リーフ  (紺野、牧田と待ち合わせている。)

 

      (牧田、中山を送り届けてからリーフに戻って来る。)

 

      (夕方のピークが過ぎて、洋子も厨房の太郎も一息ついている。)

 

 牧  田 「送って来ました。」

 

 紺  野 「何か、言ってたかい?」

 

 牧  田 「いいえ、特に。警部にご馳走様でしたと言ってました。」

 

 紺  野 「そう…。」

 

      (紺野、考え事をしている。)

 

 牧  田 「警部、どうかしましたか?」

 

 洋  子 「そうなのよ。さっきからずっと黙り込んで。何かあったの?」

 

 紺  野 「いや、別に…。」

 

 牧  田 「警部、課長から聴いたんですけど、状況証拠は揃ったんですよね。」

 

 紺  野 「うん、ほぼ揃ったかな。」

 

 牧  田 「それじゃ、後は物証ですか。」

 

 紺  野 「そう。現場周辺にも無いから、どこかに棄てたか、隠してあるかのどち

       らかなんだけどな…。それがどこなのか、見当が付かない…。」

 

 牧  田 「彼の、自宅はどうでしょうか?」

 

 紺  野 「それは無いと思うよ。ガサ入れされたら、それで終わりだからね。」

 

 牧  田 「確かに、そうですね…。」

 

      (2人、黙り込んでしまう。)

 

      (洋子、厨房の冷蔵庫から、リンゴを数個と果物ナイフを持って来る。)

 

 洋  子 「ねえ、伊勢谷さんって覚えてる?」

 

 紺  野 「伊勢谷?」

 

 洋  子 「そう。私が少年課にいた頃の同僚で、実家の青森に帰った…。」

 

 紺  野 「あ、あの伊勢谷さんか。家庭の事情で警察を辞めて実家に帰ったんだっ

       け。」

 

 洋  子 「その伊勢谷さんが、リンゴを箱で送って来てくれたの。食べない?」

 

 紺  野 「頂こうか。」

 

      (洋子、果物ナイフで皮を剝き始める。)

 

      (紺野、その様子をじっと見ている。)

 

 牧  田 「警部、何か…?」

 

 紺  野 「果物ナイフ…。」

 

 牧  田 「警部…?」

 

 紺  野 「あの、その果物ナイフ、どこにあった?」

 

 洋  子 「え?厨房だけど?」

 

      (紺野、椅子から立ち上がって厨房に行く。)

 

 紺  野 「太郎さんごめん、厨房を見せて貰っていいかな。」

 

 細  谷 「はい、どうぞ。」

 

 紺  野 「刃物類は、いつもどこにしまってる?」

 

 細  谷 「ここです。」

 

      (細谷、扉を開ける。)

 

      (そこには、包丁とナイフが5本しまってある。)

 

 紺  野 「有難う。」

 

 細  谷 「はい。」

 

      (細谷、扉を閉める。)

 

      (紺野、厨房から出て来る。)

 

 紺  野 「牧田君、凶器を見つけたかも知れないよ。」

 

 牧  田 「本当ですか?」

 

 紺  野 「ああ。私の勘が正しければね。」

 

      (紺野、携帯を出して吉川に掛ける。)

 

 吉  川 「はい、吉川。紺野君、どうした。」

 

 紺  野 「課長、明日までに家宅捜索令状と逮捕状を請求して頂きたいのです

       が。凶器が見つかるかもしれません…。」

 

      (牧田、洋子が切ったリンゴを食べながら聴いている。)

      

      (紺野、リンゴを1口食べる。)

 

〇工場   (中山、出勤してくる。)

 

      (正面入り口で、紺野と牧田が待っている。)

 

       ―第10話 了―

      (全て、フィクションです。) 

 

2本のナイフ 第9話

〇捜査一課 (吉川、リーフから戻る。)

 

      (先に、紺野たちが戻っている。)

 

 吉  川 「何だ、戻ってたのか。」

 

 紺  野 「さっき戻って来ました。課長はどちらに?」

 

 吉  川 「ちょっと、リーフに夕食を食べに行ってた。君たちは、ノンアルでも飲

       んで来たのか?」

 

 紺  野 「ソフトドリンクと、一緒に食事を摂って来ました。」

 

 吉  川 「何を、食べたんだ?」

 

 紺  野 「あの店には日替わりのパスタというのがありまして、今日は…何だった

       かな。」

 

 牧  田 「ホタテとシメジのクリームパスタです。」

 

 紺  野 「そう、それでした。美味しかったですよ。課長は?」

 

 吉  川 「生姜焼き定食だよ。今日の日替わり定食だ。」

 

 紺  野 「そうでしたか。」

 

 吉  川 「君は、知らないのかね?」

 

 紺  野 「はい。私は一切関与していませんので。…ところで、アリバイの方です

       が…。」

 

 吉  川 「どうだった?確認できたのか?」

 

 紺  野 「ほぼ、彼の証言通りでした。ですが、まだ引っ掛かりますね。」

 

 吉  川 「引っ掛かる?」

 

 紺  野 「はい。幾つか、気になる点があります。アリバイ成立とは、まだ言えな

       い気がします。」

 

 吉  川 「君の考えを聴こう。」

 

      (紺野、吉川に話し始める。)

 

〇工場前  (紺野たち、正面入り口付近で中山を待っている。)

 

      (終業時間になり、従業員たちが続々と出て来る。)

 

      (紺野たち、中山を見つけて声を掛ける。)

 

 紺  野 「中山さん!」

 

 中  山 「刑事さん…。」

 

      (中山、紺野たちの元に来る。)

 

 紺  野 「お待ちしてました。」

 

 中  山 「俺に、まだ何か用ですか?」

 

 紺  野 「はい。いかがですか?一緒に食事など。私のイチ押しのお店にお連れし

       ましょう。色々お話ししたい事がありますので。」

 

 中  山 「はい…。」

 

 紺  野 「それでは、どうぞ乗って下さい。」

 

      (中山、牧田が運転する車に乗ると、車を出す。)

 

〇リーフ  (紺野たち、リーフに入る。)

 

 洋  子 「あら、いらっしゃい。」

 

 紺  野 「奥、空いてる?」

 

 洋  子 「どうぞ。」

 

      (紺野、手を挙げて応える。)

 

 紺  野 「ここは、私のカミさんがやってる店でして。県警本部に近いので、警察

       関係者も多く来るんですよ。」

 

      (紺野たち、奥の個室に入る。)

 

〇個室   (洋子、水を持って来る。)

 

 洋  子 「いらっしゃいませ。」

 

 紺  野 「こちら、中山さん。…カミさんです。」

 

      (中山、小さく頭を下げる。)

 

 洋  子 「いらっしゃい。何になさいますか?」

 

      (洋子、メニューを見せる。)

 

 紺  野 「仕事あがりなんですから、しっかりしたモノがいいんじゃないですか?

       ここは、日替わり定食がお薦めなんですよ。」

 

 洋  子 「今日は、特製ハンバーグ定食ですよ。」

 

 中  山 「それじゃ、特製ハンバーグ定食を下さい。」

 

 紺  野 「牧田君は?」

 

 牧  田 「じゃあ、僕も。」

 

 洋  子 「緑茶でいい?」

 

 紺  野 「うん、頼むよ。」

 

 洋  子 「はい。少々お待ち下さい。」

 

      (洋子、個室を出る。)

 

 紺  野 「さて、料理が来るまでの間、私の用件をお話ししましょう。」

 

 中  山 「用件って、何ですか?」

 

 紺  野 「昨日、貴方のアリバイを確認するために船橋に行って来ました。貴方が

       仰ったお店にも行って、店長さんからお話しを聞いて来ました。」

 

 中  山 「それで?」

 

 紺  野 「事件当日の11時頃、確かに貴方はあの店に行っていました。閉店間際

       に突然来たので、店長さんはよく覚えていらっしゃいました。お話によ

       ると、貴方はあまりひどく酔っぱらう事は無いそうですね。お酒がお強

       いそうで。」

 

 中  山 「どうかな…。」

 

 紺  野 「店長さんが、不思議がってましたよ。普段ウイスキーをストレートでお

       飲みになる貴方が、何であんなに酔っぱらったんだろうって。」

 

 中  山 「それが、どうかしましたか?」

 

 紺  野 「いいえ、お酒が強いのは個人差がありますから、別に問題じゃありませ

       ん。私が引っ掛かっているのは、こっちの方で。」

 

 中  山 「何ですか?」

 

 紺  野 「貴方は、店長さんから酔い覚ましの水を貰って、そしてトイレも借りて

       いらっしゃいますね。」

 

 中  山 「そうでしたか。あまり覚えてないけど…。」

 

 紺  野 「借りてるんです。ですが貴方、店長さんにこう言ったそうですね。『近

       くの公園で飲んでたんだけど、飲みすぎた。』って。覚えてますか?」

 

 中  山 「いいえ、あまり…。」

 

 紺  野 「そこで、我々は貴方が飲んでいたという公園に行ってみました。そうし

       たら驚きましたね。なんとその公園は、まさに事件があった公園だった

       んです。これは、偶然でしょうか。」

 

 中  山 「さあ…。」

 

 紺  野 「しかも、貴方が公園にいた時間は、事件が起きた時間帯と同じという事

       になります。これも偶然でしょうか。」

 

 中  山 「どうなんでしょう…。」

 

 紺  野 「念のためお聞きしますが、公園で飲んでいた時に不審な人物を見た事は

       ありませんか?」

 

 中  山 「いいえ、覚えていませんが…。」

 

 紺  野 「それ以上に私が引っ掛かるのは、何故わざわざ店に行ったんでしょう

       か?」

 

 中  山 「どうして、そんな事を…。」

 

 紺  野 「あの公園は小さい公園ですが、水道もトイレも完備されています。あそ

       こで飲んでいたのなら、何故公園で用を済まさなかったんでしょうか。

       わざわざお店に行かなくても、全てあそこで用が済むのに、です。もし

       かしたら、何か他の用件があってお店に行ったんじゃないか。そう考え

       る事も出来ると思うんです。いかがですか?」

 

 中  山 「それは、考えすぎだと思います。俺はただ、お店に行って落ち着きたか

       っただけですよ。公園で飲んだって、落ち着けませんから。」

 

 紺  野 「なるほど。それならどうして、最初からお店で飲まなかったんでしょう

       か。貴方の仰る通り、私の考えすぎかもしれませんが、可能性としては

       充分あり得ると思うんです。我々刑事は、考え得る事を1つずつ潰して

       行って真相に辿り着くような捜査をしていますから、まあ、こういう考

       えもあるという事を知って置いて下さい。」

 

      (洋子、特製ハンバーグ定食と緑茶を持って来る。)

 

 洋  子 「はい、お待たせしました。特製ハンバーグ定食です。」

 

      (洋子、牧田と中山に特製ハンバーグ定食を置く。)

 

 洋  子 「(緑茶を置きながら)ここは、貴方に付けていいの?」

 

 紺  野 「そうしてくれる?」

 

 洋  子 「はい。それじゃ、ごゆっくり。」

 

      (洋子、個室を出て行く。)

 

 紺  野 「さあ、遠慮なく食べて下さい。」

 

 牧  田 「頂きます。」

 

      (牧田と中山、特製ハンバーグ定食を食べ始める。)

 

      (その時、紺野の携帯が鳴る。)

 

 紺  野 「ちょっと、失礼…。」

 

      (紺野、個室を出て携帯に出る。)

 

      (その様子を、洋子が見ている。)

 

 紺  野 「はい、紺野です。」

 

 吉  川 「吉川だ。今、どこだ?」

 

 紺  野 「店にいます。」

 

 吉  川 「そうか。鑑識から、新たな報告が上がって来たぞ。戻れるか?」

 

 紺  野 「そうですね…。20分後に戻ります。」

 

 吉  川 「分かった。」

 

      (紺野、携帯を切る。)

 

      (洋子、奥に水を持って来る。)

 

 洋  子 「どうする?戻るなら戻ってもいいけど。」

 

 紺  野 「大丈夫。課長に言ってあるから。」

 

 洋  子 「そう。」

 

      (洋子、個室に入る。)

 

      (紺野、その様子を見ている。)

 

〇捜査一課 (吉川と大滝、紺野を待っている。)

 

      ―第9話 了―

 

     (全て、フィクションです。)     

2本のナイフ 第8話

〇船橋   (バー『ビート』の店長、岡本が開店の準備をしている。)

 

      (そこに、紺野と牧田が来る。)

 

 紺  野 「すいません、こちらの店長さんでしょうか?」

 

 岡  本 「はい、そうですが。」

 

 紺  野 「千葉県警捜査一課の、紺野と牧田です。」

 

      (紺野、手帳を見せる。)

 

 岡  本 「何か、御用ですか?」

 

 紺  野 「はい、こちらのお客さんで、中山徹という方をご存じですか?」

 

 岡  本 「ウチの、常連さんですが。」

 

 紺  野 「昨夜、中山さんがこちらに来たという事を聴きましたので確認に来たん

       ですが。」

 

 岡  本 「はい、確かに来ましたが、彼が何か?」

 

 紺  野 「この近くで起きた事件について調べているんですが、ガイシャの関係者

       の中に彼の名前がありまして、アリバイを確認しています。」

 

 岡  本 「そうですか…。確かに来ましたよ。あ、中へどうぞ。」

 

      (岡本、2人を店内に入れる。)

 

 紺  野 「何時頃か覚えてますか?」

 

 岡  本 「11時頃です。丁度閉店の準備をしている時でしたから。」

 

 紺  野 「お1人で、来たんですか?」

 

 岡  本 「はい。彼には珍しく、ひどく酔っぱらってましたね。」

 

 紺  野 「珍しいというのは、そういう事はあまりないという事でしょうか?」

 

 岡  本 「彼は強い方でしてね、いつもウイスキーをストレートで飲んでるんです

       よ。」

 

 紺  野 「なるほど…。それで、どんな様子でしたか?」

 

 岡  本 「かなり酔っていたので、水を飲ませてそこのソファーに寝かせました。

       私はその間に、閉店の準備をしていました。」

 

 紺  野 「どのくらいの間、寝ていましたか?」

 

 岡  本 「そんなに、長く無かったですよ。暫くしたら自分で起き上がって帰って

       行きました。」

 

 紺  野 「中山さんは、どこで飲んだとか言ってましたか?」

 

 岡  本 「この近くの公園で飲んでたって言ってました。」

 

 紺  野 「近くの公園…。どの辺りにありますか?」

 

 岡  本 「前の通りを右に入ってすぐです。お2人が調べておられる事件の現場

       になった公園じゃないですか?ニュースを見てすぐ分かりました。」

 

 紺  野 「するとここは、現場のすぐ近くですか。」

 

 岡  本 「はい。」

 

 紺  野 「そうですか。後で行って確認します。」

 

      (牧田、2人の会話をメモしている。)

 

 紺  野 「どうも、色々参考になりました。有難うございました。」

 

      (紺野たち、店を出て行こうとする。)

 

 岡  本 「あ、ちょっと待って。」

 

 紺  野 「何でしょうか。」

 

 岡  本 「夕食がまだでしたら、いかがですか?」

 

 紺  野 「こちらで?」

 

 岡  本 「パスタなら、すぐに出せますよ。」

 

 紺  野 「いや、でもまだ開店前でしょう。その現場の公園も確かめてみたいです

       しね…。」

 

 岡  本 「いや、今から開店しますよ。今日最初のお客さんだ。どうぞ、お座り下

       さい。」

 

 紺  野 「そうですか?…牧田君、それじゃ、食べて行こうか。」

 

 牧  田 「はい。」

 

 岡  本 「まず、お飲み物からどうぞ。」

 

      (岡本、メニューを見せる。)

 

 紺  野 「あ、まだ勤務中なのでアルコールは飲めませんが、いいですか?」

 

 岡  本 「ソフトドリンクとノンアルは、こちらです。」

 

 紺  野 「そうですね…。牧田君は?」

 

 牧  田 「僕は、オレンジジュースで。」

 

 紺  野 「あ、そうだ。君はアルコール駄目だったんだよね。」

 

 牧  田 「そうです。」

 

 紺  野 「それじゃ、私は…、レモンジュースにします。」

 

 岡  本 「分かりました。それからパスタはホタテとシメジのクリームパスタです

       が、宜しいですか?ウチは日替わりで出してるんですよ。」

 

 紺  野 「日替わりですか。それじゃ、それでお願いします。」

 

 岡  本 「それでは、飲み物を先にお出ししますね。」

 

      (岡本、飲み物を用意する。)

 

〇リーフ  (洋子、厨房で洗い物をしている。)

 

      (吉川、店を訪れる。)

 

 吉  川 「こんばんは。」

 

 洋  子 「あ、課長さん。いらっしゃいませ。」

 

 吉  川 「まだ、大丈夫かい?」

 

 洋  子 「はい、どうぞ。」

 

      (洋子、洗い物の手を止めて接客する。)

 

 洋  子 「何に、なさいますか?」

 

 吉  川 「今日の定食は?」

 

 洋  子 「生姜焼き定食です。」

 

 吉  川 「それじゃ、生姜焼き定食を。」

 

 洋  子 「はい。県警の食堂じゃなくていいんですか?」

 

 吉  川 「県警の食堂だと、どうしてもメニューが似たり寄ったりになっちゃうか

       らね。たまには違うものを食べたくなってさ。」

 

 洋  子 「少々お待ち下さい。」

 

      (洋子、厨房に注文を通す。)

 

 洋  子 「あの人は、捜査ですか?」

 

 吉  川 「そう。今は、船橋の何とかっていうバーに聞き込みに行ってる。参考人

       のアリバイを確認しに行ってるよ。」

 

 洋  子 「バーですか…。」

 

 吉  川 「いい時間だから、もしかしたら1杯飲んでくるかもしれないな…。」

 

 洋  子 「1人ですか?」

 

 吉  川 「いや、牧田君も一緒だよ。」

 

 洋  子 「それじゃ、飲まないんじゃないでしょうか。」

 

 吉  川 「どうして?」

 

 洋  子 「牧田さん、お酒は飲めませんから。」

 

 吉  川 「そうか、1人だけ飲むような事はしないか。」

 

 洋  子 「はい。食べては来るでしょうけど…。」

 

 吉  川 「さすが、よく分かってるね。」

 

 洋  子 「私なりの、推理です。」

 

 吉  川 「その通りかもしれないよ。これなら、いつでも復帰出来るな。」

 

 洋  子 「復帰は、…しないと思います。」 

 

 吉  川 「そうかい?」

 

 洋  子 「はい。今の方が、充実していますから。」

 

 吉  川 「そう…。」

 

      (生姜焼き定食が出来上がり、洋子、厨房から持って来る。)

 

 洋  子 「お待たせしました、生姜焼き定食です。」

 

 吉  川 「これは、美味そうだ。頂きます。」

 

      (吉川、生姜焼き定食を食べ始める。)

 

〇公園   (紺野たち、岡本が言っていた公園に来る。)

 

 牧  田 「警部、ここは…。」

 

 紺  野 「ああ。確かに、現場の公園だ。」

 

      (紺野、公園を見回す。)

 

 牧  田 「何か。」

 

 紺  野 「いや、小さい公園だけど、水道はそこにあるね。」

 

 牧  田 「はい。あそこに1か所ですね。」

 

 紺  野 「トイレはあるかい?」

 

      (牧田、トイレを探す。)

 

 牧  田 「あ、あの奥の方にあります。」

 

       (2人、トイレの前に行く。)

 

 紺  野 「確かに、あるね…。」

 

 牧  田 「警部、何か気になる事でも…。」

 

 紺  野 「牧田君。」

 

 牧  田 「はい。」

 

 紺  野 「やっぱり、引っ掛かるね。彼は…。」

 

 牧  田 「え?」

 

 紺  野 「しかし、断定するにはまだ早いな。証明しなければいけない事が幾つか

       あるからね…。牧田君、本部に戻ろうか。」

 

 牧  田 「はい。」

 

      (2人、公園を出て行く。)

 

〇捜査一課 (紺野たち、一課に戻って来る。)

 

      (吉川、すでにリーフから戻って来ている。)

 

      ―第8話、了―

 

     (全て、フィクションです。)        

  

2本のナイフ 第7話

〇捜査一課 (紺野、一課に戻って来る。)

 

 紺  野 「戻りました。」

 

 吉  川 「お疲れさん。どうだった?」

 

 紺  野 「ちょっと、鑑識に寄って来ました。」

 

 吉  川 「何か、出たか?」

 

 紺  野 「貸金庫にあった、USBメモリーの中身を見せて貰いました。それがこ

       れです。」

 

      (紺野、内ポケットから袋を出し、中身を机の上に出す。)

 

 吉  川 「写真か。」

 

 紺  野 「はい、全部で260枚ほど保存されていました。この中に、この写真が

       ありました。」

 

      (紺野、貸金庫にあった写真と、USBメモリーにあった中山の写真を並

       べる。)

 

 吉  川 「同じ写真だな。」

 

 紺  野 「はい。問題は、何故この写真だけがプリントされた状態で貸金庫に入れ

       られていたかという事です。」

 

 吉  川 「紺野君の、見解は?」

 

 紺  野 「最近、この写真を使って、中山氏と接触したんじゃないでしょうか。」

 

 吉  川 「という事は、2人は何処かで会っていると?」

 

 紺  野 「そう思いますね。」

 

 吉  川 「その事を、中山氏に聴いて見たのか?」

 

 紺  野 「聴きましたが、会った事は無いと否定しました。」

 

 吉  川 「君の見方が正しいとすると、矛盾するな。」

 

 紺  野 「当日の夜の、彼のアリバイを聴いて来ました。」

 

 吉  川 「何と言った?」

 

 紺  野 「昨夜の11時頃は、船橋の『ビート』というバーで飲んでいたと言って

       います。」

 

 吉  川 「確かなのか?」

 

 紺  野 「明日、確認しようと思います。」

 

 吉  川 「そうか。」

 

      (そこに、牧田が帰って来る。)

 

 牧  田 「戻りました。」

 

 吉  川 「お疲れ。」

 

 牧  田 「警部、ガイシャの正体が分かりました。どうやら、闇金のような事をし

       ていたようですね。」

 

 紺  野 「闇金?」

 

 牧  田 「このリストにある人物に当たって見たら、この人たちはガイシャの被害

       者でした。」

 

 紺  野 「金を貸していたのか?」

 

 牧  田 「法外な金利で金を貸していたのは確かですが、それだけじゃありませ

       ん。強請りのような事もやっていたようです。強請りの被害者も数名い

       ました。」

 

 吉  川 「もしかしたら、中山氏も…。」

 

 紺  野 「被害者の可能性はありますね。」

 

 吉  川 「そうなると、動機の線が出て来た訳だ。」

 

 紺  野 「はい…。」

 

 吉  川 「ガイシャに、マエは無いのか?」

 

 牧  田 「鑑識で調べて貰いましたが、逮捕歴すらありませんでした。」

 

 吉  川 「逮捕もされずに200人以上の被害者って、ちょっと異常だな。」

 

 紺  野 「よっぽど強力なネタを握っていたんでしょうね。これだけの被害者が泣

       き寝入りせざるを得なかったんですから。課長、ガイシャの身元を四課

       に問い合わせて頂けますか?」

 

 吉  川 「マル暴との繋がりだな。調べて見よう。」

 

 紺  野 「お願いします。」

 

 吉  川 「それにしても、この写真がネタだとすると、どこにあるんだ?」

 

 紺  野 「そうですね…。」

 

      (紺野、写真の裏を見せる。)

 

 紺  野 「中山氏の名前の隣に、日付があります。10年前ですね…。」

 

      (紺野、写真の表に戻す。)

 

 紺  野 「彼が乗っている車は…。」

 

 牧  田 「10年前でしたら、この車は当時の高級車ですよ。」

 

 紺  野 「牧田君、車に詳しかったっけ。」

 

 牧  田 「いいえ、そう言う訳じゃありませんが、友人が同じ車に乗ってまし

       た。」

 

 紺  野 「なるほど…。」

 

      (紺野、写真を手に取って、じっくりと見る。)

 

 牧  田 「警部…?」

 

 紺  野 「…牧田君、ルーペあるかな?」

 

 牧  田 「ルーペ…。はい。」

 

      (牧田、棚からルーペを出して紺野に渡す。)

 

      (紺野、ルーペでナンバープレートの辺りを見る。)

 

 紺  野 「…牧田君、このナンバーが見える?」

 

      (牧田、写真を受け取り、ルーペでナンバーを見る。)

 

 牧  田 「はい、見えます。」

 

 紺  野 「このナンバーを、10年前の事件資料と照合して見てくれる?」

 

 牧  田 「はい。」

 

      (牧田、自分のPCで検索すると、10年前の事件資料が出て来る。)

 

 牧  田 「警部、ここ見て下さい。」

 

      (紺野、資料を見る。)

 

 紺  野 「課長、これが強請りのネタですよ。」

 

 吉  川 「そういう事か…。どうやら、動機はハッキリしたな。」

 

 紺  野 「はい。…牧田君、明日一緒に船橋に行こう。中山氏のアリバイを確認す

       る。」

 

 牧  田 「分かりました。」

 

〇船橋   (バー『ビート』の店主、岡本が開店の準備をしている。)

 

      (そこに、紺野と牧田が来る。)

 

      ―第7話 了―

 

     (全て、フィクションです。)       

 

            

2本のナイフ 第6話

〇工場  (中山、昼の休憩を取りに来る。)

 

 事 務 員 「中山さん、お客さんですよ。」

 

 中  山 「俺に?」

 

      (中山、事務員の後に付いて行く。)

 

      (受付前に、紺野がいる。)

 

 紺  野 「どうも、中山徹さんですか?」

 

 中  山 「そうですが、貴方は?」

 

 紺  野 「千葉県警捜査一課の、紺野と言います。」

 

      (紺野、手帳を見せる。)

 

 

 紺  野 「船橋のご自宅に行ったら留守だったので、職場の方に来ました。」

 

 中  山 「よくここが分かりましたね。」

 

 紺  野 「どこかで、お話し出来ませんか?」

 

 中  山 「…こちらへ。」

 

      (中山、紺野をロッカールームに連れて行く。)

 

 中  山 「さて、何の用ですか?」

 

 紺  野 「はい。…この写真に、見覚えはありませんか?」

 

      (紺野、中山に貸金庫で見つけた写真を見せる。)

 

 中  山 「どこで、これを…?」

 

 紺  野 「ここに写っているのは、貴方で間違いありませんか?」

 

 中  山 「…そうです。この写真が、何か?」

 

 紺  野 「これは、いつ頃の写真ですか?」

 

 中  山 「10年以上前です。まだ20代です。この写真がどうかしましたか?」

 

 紺  野 「今朝、船橋で殺人事件があったのをご存じですか?」

 

 中  山 「ああ、ニュースでやってましたね。」

 

 紺  野 「その被害者を調べていたら、この写真が出て来ました。『郷原秀行』と   

       いう人物をご存じですか?」

 

 中  山 「…いや、知りません。この人が、俺と何か関係があるんですか?」

 

 紺  野 「今、まさにそれを調べていましてね。何故ガイシャがこの写真を持って

       いたのか。」

 

 中  山 「さあ、分かりません。」

 

 紺  野 「どこかで会ったとか、記憶にありませんか?」

 

 中  山 「さあ、覚えていませんね。」

 

 紺  野 「そうですか。貴方と何処かで面識があると思ったんですがね。」

 

 中  山 「どうして、そう思うんですか?」

 

 紺  野 「この写真の裏を見て下さい。」

 

      (紺野、写真の裏を見せる。)

 

 紺  野 「ほら、ここに貴方の名前が書いてありますね。『中山徹』とね。」

 

 中  山 「確かに…。」

 

 紺  野 「面識が無いのなら、どうしてガイシャは貴方の名前を知っていたんでし

       ょうか。全く知らない人物の名前を、書く事は無いと思うんですが。」

 

 中  山 「はい…。」

 

 紺  野 「それから、もう1つ気になる事がありまして。」

 

 中  山 「何ですか?」

 

 紺  野 「この写真、どこにあったと思いますか?」

 

 中  山 「どこですか?」

 

 紺  野 「ガイシャが利用している銀行の、貸金庫です。」

 

 中  山 「貸金庫…。」

 

 紺  野 「おかしいですよね。何の面識のない人物の写真を、何故わざわざ貸金庫

       に保管していたんでしょうか。貸金庫に保管するという事は、この写真

       がガイシャにとっては、とても貴重なモノだった。そう考えると、貴方

       と面識が無かったとはとても思えないんですがね。」

 

 中  山 「…そう言えば、何処かで会ったかもしれない。思い出してみましょ

       う。10年以上前なら、覚えているかは微妙ですが。」

 

 紺  野 「そうして頂けると、助かります。しかし、意外と最近かもしれません

       ね。」

 

 中  山 「どうして?」

 

 紺  野 「銀行の記録によると、最近貸金庫を利用したのが2週間前です。その時

       にこの写真を保管したんだとしたら、最近お会いになっているかもしれ

       ない。そう思いまして。」

 

 中  山 「そうですか…。会った記憶はありませんが、思い出してみましょう。」

 

 紺  野 「お願いします。我々としても、今はどんな手掛かりでも欲しいので。も

       し思い出されたら、捜査一課に連絡して下さい。」

 

 中  山 「はい。」

 

 紺  野 「それじゃ、どうも…。」

 

      (中山、出て行こうとして立ち止まる。)

 

 紺  野 「あ、そうだ。こいつを忘れてた…。」

 

 中  山 「何ですか?」

 

 紺  野 「昨夜11時頃の、貴方のアリバイを教えて頂こうと思いまして。」

 

 中  山 「どうして、そんな事を聴くんですか?俺は無関係ですよ。」

 

 紺  野 「そうかもしれませんが、写真の件がありますんでね。念の為です。」

 

 中  山 「11時頃なら、船橋の『ビート』っていうバーにいました。」

 

 紺  野 「船橋ですか…。確か貴方のご自宅も船橋でしたね。」

 

 中  山 「はい。マスターに聴いてくれれば分かりますよ。」

 

 紺  野 「その時のお客さんは、貴方だけでしたか?」

 

 中  山 「そう。俺だけです。」

 

      (紺野、証言をメモする。)

 

 紺  野 「分かりました、早速確認します。どうも、お邪魔しました…。」

 

      (紺野、ロッカールームを出て行く。)

 

      (中山、茫然としながら見送る。)

 

〇捜査一課 (紺野、一課に戻って来る。)

 

       ―第6話 了―

 

      (全て、フィクションです。)

2本のナイフ 第5話

〇美浜銀行 (稲毛支店。紺野、行員に金庫を開けて貰う。)

 

 紺  野 「拝見します。」

 

      (紺野、中を改めると、小袋に入ったUSBメモリーと、小さい封筒が保

       管されている。)

 

 紺  野 「これは、メモリーですね。こっちは何でしょう…。」

 

      (紺野、封筒を開けると、1枚の写真が入っている。)

 

      (紺野、写真の裏を見ると、『中山徹』の名前が書いてある。)

 

 紺  野 「中山徹。誰だろう…。すいません、この2つはお預かりします。」

 

 行  員 「はい。」

 

 紺  野 「それからもう1つ、ここに貸金庫があるという事は、口座もあると言う

       事ですね?」

 

 行  員 「はい、ございます。」

 

 紺  野 「その口座の取引の記録があれば、見せて頂きたいのですが。」

 

 行  員 「分かりました。どうぞ、こちらへ。」

 

      (紺野、行員と一緒に貸金庫を出る。)

 

〇駐車場  (紺野、銀行の駐車場に戻ると、携帯が鳴る。)

 

      (紺野、車中で携帯に出る。)

 

 紺  野 「はい、紺野。」

 

 牧  田 「警部、牧田です。ガイシャの周辺を洗いました。」

 

 紺  野 「何か分かった?」

 

 牧  田 「どうやら、ガイシャは定職には就いていなかったようです。」

 

 紺  野 「そう…。」

 

 牧  田 「ですが、どういう訳か金回りはいいんです。車も即金で購入していまし

       た。」

 

 紺  野 「何らかの、不労報酬でもあったのかな。」

 

 牧  田 「それは、これから調べて見ます。」

 

      (紺野、口座の記録を出して見る。)

 

 紺  野 「…牧田君、ガイシャの口座を見てもそう言えるかもしれないね。その収

       入源を探ろう。もしかしたら、例のリストを調べれば何か出て来るんじ

       ゃないかな。」

 

 牧  田 「分かりました。所轄と協力してリストの人物を洗います。」

 

 紺  野 「人数が多いけど、頼むよ。あ、それからもう1つ。」

 

 牧  田 「はい。」

 

 紺  野 「そのリストの中に、『中山徹』と言う名前の人物はいるかな。」

 

 牧  田 「待って下さい。『中山徹』ですね?確認します。」

 

      (紺野、牧田の回答を待つ。)

 

 牧  田 「ありますね。リストの1番最後に載ってます。」

 

 紺  野 「1番最後か…。」

 

 牧  田 「はい。住所のようなモノが2件書いてあります。」

 

 紺  野 「2件とも教えてくれる?その人物は私が当たろう。」

 

 牧  田 「はい。では自宅の住所です。船橋市…。」

 

      (紺野、住所をメモする。)

 

 紺  野 「…分かった。もう1つは?」

 

 牧  田 「もう1つは、勤務地のようですね。住所は鎌ケ谷市…。」

 

 紺  野 「…鎌ケ谷だね?分かった。それじゃ、頼むよ。」

 

 牧  田 「了解。」

 

      (紺野、携帯を切る。)

 

 紺  野 「よし、最初は船橋だな…。」

 

      (紺野、駐車場を出る。)

 

〇工場   (中山、作業を終えて、昼休みを取りに休憩所に来る。)

 

       ―第5話― 了―

 

      (全て、フィクションです。)